目次
不安障害とは
「不安」は人が危険から身を守るために必要で、正常な反応です。一方で病的な不安は、危険がないところで不安になったり、特定の状況に対して必要以上に心配や恐怖を感じます。
不安障害は、「パニック障害」「全般性不安障害」「恐怖症」に分類され、女性と30代~40代に発症が多く、高齢者には少ないのが特徴で、およそ6%の人が何らかの不安障害を経験しています。
パニック障害
予期しないパニック発作(不安発作)が繰り返し起こる。
- 発症率:約1%
- 診断:危険のない場所で3週間に3回以上の発作がある場合
発作の症状としては、発汗、震え、脈拍増加、呼吸の乱れ、めまい、吐き気、動悸、胸や腹部の痛みや不快などの症状があらわれ、「このまま死ぬのではないか?」「気が狂ってしまう」といった強い恐怖に襲われるのが特徴です。
通常、パニック発作は数分で治まります。しかし、一度パニックを経験してしまうと、その強烈な恐怖からパニックが起こった場所に近づけなくなったり、似たような状況を避けるようになることがあり、これは「予期不安」と呼ばれます。
予期不安が進行し、外出や人と接することが困難な状況になることを「広場恐怖」といい、慢性的な不安障害にみられる症状です。
パニック障害の原因
パニック障害の原因は、脳の機能的な問題と考えられていますが、はっきりとした原因は解明されていません。なお、パニック障害は家族性があり、何らかの遺伝因子があることが分かっています。
- 遺伝的な要因
パニック障害の治療法
パニック障害の治療は認知行動療法による心理療法が一般的です。必要に応じて抗うつ薬の一種(SSRI)を利用した治療もおこなわれています。
- 認知行動療法
- リラクセーション法
- SSRI(抗うつ薬)
全般性不安障害
理由もなくよくわからない不安や心配があり、「学校に行けない」「職場に行けない」といった漠然とした強い不安症状を特徴とする障害。
- 発症率:約3%
- 診断:不安による生活上の問題が6ヶ月以上
- 女性に多い
- 好発年齢:10代~20代
全般性不安障害の症状
- 漠然とした不安、恐怖、警戒心
- 眠れない
- 手足や身体の震え
- 緊張による疲れ、肩こり
- 自律神経失調症
職場や病気、事故や災害などに対して、理由なく上に挙げたような症状が続くのが全般性不安の症状です。
全般性不安障害の原因
- 遺伝
- 幼少期の体験や教育
- ストレス
全般性不安にも遺伝要因があるとされている。また、抑圧さている子供のころの強いストレス体験や、現在のストレス環境なども原因になると考えられています。
全般性不安障害の治療法
- 認知行動療法
- リラクセーション法
- SSRI(抗うつ薬)
パニック障害と同様に、認知行動療法が治療に効果的で、不安を抑えるために必要に応じて抗うつ薬が処方されます。
恐怖症
高所恐怖や虫恐怖など特定の恐怖症が多々ありますが、社会生活に支障が大きい恐怖症は「広場恐怖」と「社交恐怖」です。また、治療を必要とする恐怖症の発症者では半分以上が広場恐怖症です。
広場恐怖
広場恐怖症は、主にパニック発作を経験したことによる「予期不安」の症状です。発作という強烈な恐怖体験がトラウマになり、発作が起きた状況に似た場所や、発作が起きたら助けが来ないと思う場所を避ける行動をとるのが特徴です。極端な例では一人で家の外に出ることさえ困難になります。
- 恐怖性障害の約60%
- 好発年齢:10代後半から30代
社交恐怖(社会恐怖)
他人とのかかわりや社交の場に強く不安を持つ症状です。多くは、人前で赤面や震えといった恥ずかしい思いをするのではないかと強い不安を持っています。「人前での発言」「文字を書く」「食事をする」など、社会的な生活に必要な行動が困難になり、日常生活が困難になります。
- 症状:声や手の震え、めまい、動悸、赤面、汗、吐き気
特定恐怖
特定の状況や対象に対して強い恐怖反応が現れるのが特徴です。多くは、恐怖対象を避けているため、日常生活に支障がでることは少ないです。
- 対象:高所、閉所、男性、乗り物、昆虫、動物、血etc
●恐怖症の治療法
行動療法および認知行動療法の系統的脱感作法や暴露反応妨害法(ERP)といった暴露法を用いた治療が効果的とされています。また、状況に応じてSSRIなどの抗うつ薬も処方されます。
関連記事|認知行動療法の理論と技法