ストローク
ストロークとは、自分の存在を証明する刺激です。「ここに私がいますよ」「そこにあなたがいますよ」という言葉やふれあいの一つ一つです。
挨拶をして、聞こえないふりでもしているかのように反応がなかったら、ムッとして怒ったり、悲しい気持ちになると思います。それは、反応というストロークが返ってこないことで、いまここにある自分の存在を否定されているからです。
人間は、常に自分の存在を認めてもらわないと生きていけない生き物です。ストロークは空気や食物と同じように欠くことができないものなのです。
例えば、壁を叩くと音がして、叩いた手に痛みが走ります。この音や痛みも、自らが発した刺激(壁をたたく)に対する反応(音・痛み)として、その人の存在を証明するストロークとなっています。このように人は五感を通してあらゆるストロークを受け取っています。
ストロークなしでは生きていけない
ストロークの必要性について2つの実験を紹介します。
【ルネ・スピッツの実験】
1952年にスイスの心理学者ルネ・スピッツによる孤児の赤ちゃんを使った衝撃の実験がおこなわれました。この実験では乳幼児55人を設備の整った施設で人間的なスキンシップなしで機械的に子供を育てるとどうなるのか?ということを観察したものです。結果、2年で27人が死亡し、残った子供のうち17人が成人前に死亡、残り11人は成人したが精神的・知能的な障害がみられました。
幼児期にスキンシップ(カラダやこころのなふれあいによるストローク)が足りないと、感情を失うばかりか肉体の成長、さらには生命維持が困難になることが分かっています。
【感覚遮断実験】
また、同じく1950年ごろにイギリスやアメリカで思想教育の研究として「感覚遮断」と呼ばれる心理学的な実験がおこなわれていました。この実験では、被験者を音のない部屋で目を塞ぎ、体の動きを制限します。結果、2.3日もすると約半数の被験者は幻覚を見るようになったそうです。
外界からの刺激が遮断され、ストロークが不足したために、生命を維持するに必要なストロークを幻覚を使って作り出していると考えられます。
良いストロークと悪いストローク
【陽性のストローク】
「あなたは本当にすばらしい」
「おはよう」
肯定的な評価で、受け取って気持ちのいいストロークです。軽い挨拶から性行為など密度の濃いものまで幅広いですが、陽性のストロークが満たされていると、心の健康維持や成長に結びつきます。
【陰性のストローク】
「あなたのことが嫌い!」
「こっちを見ないで」
人は、良い(陽性)ストロークが得られないと、人に嫌がらせをしたり、他人に危害を加えるといった方法で相手を反応させ、そこからストロークを満たそうとします。これを陰性のストロークといい、否定的な言葉でも、存在していることの証明になるので、ストロークが無い(無視される)よりずっとマシなのです。
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