統合失調症
- 好発年齢:10代後半~20代
- 発症率:約1%
- 治療:薬物治療が中心
- 完治率:20%弱
- 再発率:80%(回復後5年以内)
統合失調症は、幻聴や妄想を主な症状とする精神疾患です。思考や行動、感情が通常のまとまりを失います。症状は、通常では考えられないような妄想から異常な行動を起こしたり、迫害妄想から攻撃的な状態をみせる陽性症状と、無感情で自閉的な陰性症状、記憶力の低下などが特徴的な認知症状に大きく分けられます。
社会生活が困難で長期入院が必要なケースから、問題を抱えながらも職業生活が可能なケースまで症状の重さには大きな幅があります。また、本人に「私は異常ではないか?」「自分は病気ではないか?」といった病気に対する自覚がほとんどないのが特徴です。
病因については、遺伝性が確認されていますが、はっきりとした原因や発症のメカニズムは、今もなお解明されていません。
統合失調症は、発症率からも分かるように実は身近にある病気です。「彼が放火した」と非常ベルを鳴らしたり、「盗撮している」と近所の住人を訴えたりと、陽性症状は目立つので病気について知らない人からすると「危ない人」です。路上生活者の方などに多いですが、誰かと会話しているように独り言を話している人を見かけることがありますが、「独語」と呼ばれる幻聴との会話です。
統合失調症は、2002年まで「精神分裂病」と呼ばれていた疾患です。
統合失調症の症状
統合失調症の症状は、幻聴や妄想が代表ですが、軽度や重度、陽性や陰性、症状の型によって個人差がかなり大きいので、同じ統合失調症でも人によってまったく違った症状であることが多いです。
陽性症状
幻覚や妄想をはじめとする症状が陽性症状と呼ばれます。
【幻聴】
- 自分に対する悪口や批判が聞こえる
- 自分の考えが声になって聞こえる
悪口や批判が聞こえていると「こっちに来るな」「まだ居たのか」「あっちへ行け」などの独り言を繰り返すことが多いです。統合失調患者の独り言は「独語」と呼ばれ、幻聴や妄想からニヤニヤと笑ってることを「空笑」と言います。どちらも統合失調症の特徴的な症状です。
【妄想】
- 「部屋の中を盗撮されている」
- 「隣の住人は人を監禁している」
- 「インターネットで私の個人情報が悪用されている」etc
おもちゃの野球バットを目にして、とんでもない暴行がおこなわれていると妄想し、他人の敷地からバットを持ち出すなど、聞こえるものや目にしたものから妄想が展開される。本人はそれが真実だと思い込んでいるため他人に説得されても理解は難しい。
【思考】
- 思考奪取:自分の思考が盗まれている
- 思考伝播:自分の考えが周りの人に伝わってしまう
- 思考操作:誰かの考えが頭に入ってくる
陰性症状
無関心・無感情・自閉といった症状を陰性症状といいます。
- 無関心:社会・友人・家族に対してなど一切の関心がなくなる
- 無感情:表情がなくなり感情がみえない
- 自閉:思考の中などに閉じこもる
- 自傷行為:リストカットなど
統合失調症の原因
現在、統合失調症の原因やメカニズムは解明されていません。ここで紹介するのは仮説として発表されている原因です。
●遺伝要因
遺伝子研究の分野では、日本や国際チームによってさまざまな研究が報告されている。統合失調症の患者の親族が同系統の問題かその病歴をもっている割合が高いことが確認されていおり、なにかしらの遺伝要因があることが分かっています。
●ドーパミン仮説
ドーパミンを遮断する抗精神病薬が陽性症状に作用することから、ドーパミン過剰が原因ではないかという仮説
●神経発達仮説
脳の発達に何らかの問題が起こった事を要因とする仮説。妊娠中の母親のインフルエンザ感染などがその一例。
統合失調症の治療
【薬物療法】
●抗精神病薬(メジャー・トラキンライザー)
幻聴や妄想といった陽性症状の治療や予防に強力に作用する。統合失調症の治療に欠かせない主力となる薬。定型と非定型の分類があり、症状や既往症をふまえて処方される。
※コントミン、リスパダール、ジプレキサ、セレネース、セロクエル、ルーラン、エビリファイなど
●抗不安薬(マイナー・トランキライザー)
緊張や不安を和らげる薬。抗精神病薬の副作用を減らすために併用することがある。
●抗うつ剤
抑うつ症状が強い場合に用いられることがある。
●抗コリン剤
本来はパーキンソン病の治療薬です。抗精神病薬の副作用で麻痺や筋肉の運動障害を緩和する目的で用いられます。
●睡眠薬
不眠症状がある場合
【心理療法】
●認知行動療法
あくまで心理的なサポートとして効果がある。陽性症状の苦痛を軽減することなどが期待される
●家族療法
統合失調症の再発予防に効果がある
治療後
治療開始から1年以内に9割近くが回復しますが、再発率は8割ほどと言われています。また、回復後も軽度から重度の障害を残すことが多く、完全な回復が難しい病気です。発症年齢が高いほど回復率は高く、早期治療と家族支援が再発防止につながります。
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