行動療法、認知行動療法の治療技法、系統的脱感作法の紹介
系統的脱感作法とは
系統的脱感作法は、精神科医ジョゼフ・ウォルピが恐怖症に対する治療法として提唱しました。逆制止法をベースに暴露法(エクスポージャー法)とリラクセーション法を組み合わせた方法で、不安階層表という表にストレスの強い場面を設定し段階的に恐怖反応を打ち消していきます。主に強迫性障害や恐怖症の治療に効果があり、現在ではスタンダードな治療法に位置付けられます。
理論的には(例:高所恐怖)
高所に恐怖を感じるのは、高所に対して不安や恐怖の感情が条件付け(古典的条件付け)されたことによる反応だと考え、この条件付けを消去(制止)するために、恐怖とは反する反応(安心やリラックス)を高所に対して条件付けする方法です。
逆制止法
系統的脱感作法のベースになっている逆制止法について
逆制止法とは、不安や恐怖と相反する反応(拮抗反応)を同時に起こすことができれば不安や恐怖は打ち消され、感じなくなるとする説。簡単に言うと、不安を感じているときに同じだけ安心していれば不安は無くなると考えたのです。
ウォルピが、拮抗反応(不安と反対の感情)を作り出すために用いたのが、漸進的筋弛緩法と呼ばれるリラクセーション法です。
漸進的筋弛緩法
漸進的筋弛緩法は、ジェイコブソンが開発したリラクセーション法で、筋肉の「力を入れる」と「力を抜く」を繰り返し行うことにより緊張をほぐしリラックスに導く方法です。
●漸進的筋弛緩法の手順や詳細はこちら⇒漸進的筋弛緩法
そして、どのように高所など恐怖や不安の対象となっていることに対してリラクセーション法を用いるかというと、次の不安階層表を使ってまずは不安の対象を具体化します。
不安階層表
不安階層表は、クライエントが不安や恐怖を感じる刺激や場面を具体的に挙げていき、それらを約10段階、0~100点の強度(SUD)に振り分けて段階的に配列します。
●不安階層表の例
※SUD(Subjective Unit of disturbance):主観的障害単位
●不安階層表の詳細はこちら⇒不安階層表
系統的脱感作法のやり方
カウンセリングの場面を想定した系統的脱感作の手順を解説します。
- ①問題の確認とアセスメント
- ②事前説明と目標の共有
- ③不安階層表の作成
- ④リラクセーション法の実施
- ⑤系統的脱感作の開始
系統的脱感作法を実施するための準備段階です。クライエントとカウンセラーで現在の問題を確認し共有します。続いて、技法の流れや有効性、また全体的な治療理論などをカウンセラーが説明します。クライエントが納得したうえでカウンセラーは技法を用いる段階に入ります。この流れは別の治療技法を用いる場合も、認知行動療法などのカウンセリングは同じような流れで進みます。
系統的脱感作法の手順
- 筋弛緩法などで十分にリラックスし、心地よい安心感を体感します
- 作成した階層表のSUDが一番低い場面をイメージします
- 不安を感じなければ次の階層へ進みます。不安が0にならないときは、その場面で感じる今のSUDを確認します
- もう一度、リラクセーション法を使ってリラックスします
- 改めて不安の場面をイメージしSUDが0になるまで繰り返します
- 1.~6を繰り返し階層表の一番強い不安のSUDが0になったらゴールです
系統的脱感作法は、主に不安や恐怖の対象になっている状況をイメージしておこないますが、リアルな現場に出向いて実施していく方法もあります。
不安階層表のダウンロード
参考に不安階層表のPDFテンプレートを用意しました。ダウンロードしてご自由にお使いください。
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